第三章
警察への通報



 書き込みパス設定を実施した背景には、ある機関への相談があった。
 その機関とは、栃木県警察サイバー対策室であった。

 状況の悪化を辿る掲示板。
 さらに、下の発言がきっかけとなり、山井はログを持参し、所轄署である『宇都宮東警察署』へと向かった。


ネットでなめた書き込みしてるヤツはよ集団でリンチするからな。気をつけろや
てめえを二度と歩けないように足をおってやろうか。おぢげづくなよてめえ。



 罪状は『脅迫罪』。
 バカ・死ね・カス・うんこ…。
 暴言は多かったが、山井がこの発言に的を絞ったのには理由がある。

 まず、侮辱罪・名誉毀損罪を刑事事件として取り扱うのは、極めて難しいということ。
 張り紙などで、実名を晒されての侮辱行為は立件可能だが、インターネットの匿名掲示板において、侮辱発言がなされても立件しにくいという観点からである。
 事実、ネットへの書き込みでこれらの罪に問われたのは、かなり『異例』ともいえるほ少数なのである。
 しかし、脅迫罪は別である。

 身体や生命、平穏な生活に危害を及ぼす旨を告知した場合に適用される。
 これが脅迫罪である。
 キョンは、ネット上で『
集団リンチする』『二度と歩けないように足をおってやろうか』など、明確な脅迫行為を行った。

 そして、警察は「現時点では、事件性が低いと思われます。被疑者と接点を持たないように。」と警告。
 「『警察が捜査開始する』と言っていいですから。少しは大人しくなるでしょう。」と警察のアドバイスもあり、そのような書き方を行った。
 が、キョンシーの書き込みはエスカレートする一方。
 むしろ、いつまで経っても警察の姿が無いので、さらに図に乗った発言をし始めた。


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